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名古屋高等裁判所 昭和55年(行コ)6号 判決

控訴人(一審原告) 滝沢秀子

右訴訟代理人弁護士 中村亀雄

同 石坂俊雄

同 村田正人

同 大竹秀達

同 高野範城

同 高芝利仁

被控訴人(一審被告) 三重県知事 田川亮三

右指定代理人 山野井勇作

〈ほか四名〉

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者双方の申立

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  控訴人が昭和四七年八月三日付でなした恩給請求に対し、同年一二月一日付で被控訴人のなした右請求の却下処分を取消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨。

第二当事者双方の主張及び証拠関係

次に記載するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決六枚目表五行目に「二月四日」とあるのを「二月五日」と訂正する。)。

一  控訴人

1  主張の変更

控訴人が不具廃疾の状態となった時期につき、従前これを退職時たる昭和三〇年三月と主張していたが、これを昭和四六年二月と改める。これに伴い、原判決五枚目表末行から六枚目表一行目までを全部次のとおり改める。

「同二九年 七月 両耳とも八五デシベル(甲一八号証)。

同三〇年 一月 両耳とも九〇デシベル以上(甲九号証)。

同年  二月 三重県より身体障害者手帳(以下身障者手帳という。)(一種二級)を交付される(甲一〇号証)。

同月  五日 復職。

同年 三月三一日 退職。聴力障害、平衡障害及び呼吸機能低下の廃疾が残った。

同三六年 七月 東京都より身障者手帳(二種三級)を交付される。右耳九〇デシベル、左耳八五デシベル(甲一九号証)。

同四〇年 六月 都より補聴器交付(甲一九号証)。

同四二年 二月 右同。

同四三年 四月 補聴器修理(甲一九号証)。

同四六年 二月 都より身障者手帳(一種二級)を交付される。両耳とも九〇デシベル(甲一九号証)。

同四七年 四月 両耳とも九〇デシベル以上(甲七号証)。

同年  五月 両耳全聾(甲六号証)。

同年  八月 本件恩給請求。

同五五年 九月 都より身障者手帳再交付(一種二級)。右耳一〇〇デシベル、左耳九七デシベル(甲一九号証)。

(二) 不具廃疾

控訴人の身体障害は大別して、聴力障害、呼吸機能障害及び平衡機能障害に分かれる。聴力については、退職時から徐々に悪化していった。即ち退職時たる昭和三〇年三月から昭和四一、二年ころまでは、補聴器を使用すれば大声の聴取は不十分ではあるが可能であったところ、同四六年二月ころに至り、その程度が増進し補聴器を使用しても聴取が不能となった。この経過からすると、退職時は恩給法(以下法という。)別表第一号表の二(以下法一号表の二と略称する。)第四項症三または法別表第一号表の三第一款症二ないし第二款症二であったもの(即ち未だ確定的に不具廃疾といえぬ状態であったもの)が、徐々に悪化し都より身障者手帳(一種二級のもの)が交付された同四六年二月ころには、法一号表の二第二項症三の確定的な不具廃疾へと増進したものである。次に呼吸機能の障害についても、退職時から徐々に進行し、昭和五一年時点では左胸膜胼胝により呼吸機能を中等度に害するに至っている。この経過は、退職時呼吸機能障害は軽かったが、その後法別表第一号表の三第三款症五を経て、同五一年ころには法一号表の二第五項症五の程度へ増進したものである。また平衡機能の障害については、退職時は相当悪かったが徐々に回復し、現在は相当程度改善されている。

以上を総合すると、退職時から聴力損失を中心として症状が徐々に悪化増進したもので、聴力障害につき法一号表の二第二項症三に達し、かつ呼吸機能障害について同表第五項症五に該当するもので、これら合併症状を総合して不具廃疾の程度を決めるべきであるが、少くとも聴力障害については前述の如く昭和四六年二月ころには確定的に不具廃疾の状態に至ったものである。

なお、昭和三〇年一月には両耳とも九〇デシベル以上との診断書(甲九号証)が存するが、この基礎データーは不明であること、控訴人は後に補聴器を使用していること(真に九〇デシベル以上なら補聴器の意味はない。)、いわゆるストマイ難聴は予後不良で不可逆性を有し、ストマイ投与中止後も個人差はあるが大方に増悪進行するとされているのに、その後昭和三六年に至り前記のように右より軽い症状を呈していること等に照らし、右の診断内容は甚だ疑わしく、仮にそうでないとしても、右診断書の作成せられた頃は、退職を目前にして控訴人は極度の不安定状態にあったから、そのような状態に基づく心因的要素が作用した結果、一時的に前記の状態になったものと推測される。従って、右甲九号証を基として、退職時に控訴人が不具廃疾であったとするのは相当ではない。」

2  新たな主張

(一) 法四六条は、一項で公務のため疾病等にかかり不具廃疾となって退職した場合には普通恩給の外増加恩給を給することを定め、二項では退職後五年内に不具廃疾となり又はその程度が増進した場合に新たに増加恩給等を給したり、右増進の程度に相応する恩給に改定することを定め、三項では、退職後五年以上を経過した時点でも、一定の場合には不具廃疾の程度に相応する恩給を給し或いは改定するが、この場合には恩給審査会が議決した月の翌月から給することを定めている。ところで、右三項の趣旨は、公務による不具廃疾を放置するのは適当でないとの配慮のもとに、一定の限定した要件の下にではあるが、広くこれを救済しようとする趣旨であるところ、公務傷病による退職の場合には、私傷病によるそれに比し、より長期にわたって保護すべき必要がある反面、個別ケースごとに症状の変化や診断書入手の難易など様々な事情があり、また時間の経過とともに公務起因の判断が困難になる事情があるので、これらの調整を図るために、恩給審査会の議決を要することとしたものと解すべきである。従って、給与事由発生後七年以上を経過した場合でも、三項の議決さえあれば、その翌月から恩給が給与されることとなる(法四六条の二は不具廃疾の程度に至らない傷病について右四六条と同様の規定をもうけている。)。三項を右のように解しないと、昭和五四年六月二七日恩総発三四五号恩給局総務課長通知(以下三四五号通知という。)が、ことさら傷病恩給の請求を除いた趣旨が理解できない。即ち、同通知は、傷病恩給(法四六条及び四六条の二による恩給)以外の恩給については、時効消滅後も弾力的に運用し、時効消滅後の請求も五年前に遡及して恩給を給するものと定める。しかして、傷病恩給につき時効消滅後の保護の必要性は、それ以外の恩給に比し勝るとも劣らないのに、あえて右通知がこれを除いたのは、七年経過後の傷病恩給については右三項によってカバーできるものと考えていたからに外ならないのである。

(二) 右を時効との関係でみると、たとえ退職時(又は退職後五年以内)に不具廃疾の状態となり、それより七年を経過していても、法四六条三項に基づき請求する場合には時効の適用はなく、右三項による独自の請求としてその内容についての審査がなされるべきである(ちなみに三項に関して時効が適用されるとすれば、それは恩給審査会の議決があった時から七年が経過した場合と解すべきである。)。

(三) 仮に三項に関しても給与事由発生後七年の期間経過によって権利が消滅するとしても、控訴人の場合には未だ時効消滅していないと言うべきである。即ち、増加恩給については、不具廃疾(法一号表の二)ないし傷病(法別表第一号表の三)の各程度に該当する毎にその程度に応じた請求権が発生すると解すべきであるところ、控訴人の場合は前述のように、仮に退職時たる昭和三〇年三月ころに不具廃疾の状態であったとしても、それは法一号表の二のうち第四項症の三に該当する軽度のものであったから、たとえそれによる請求権が七年で時効消滅したとしても、控訴人は昭和四六年二月に至り重度(同表第二項症の三)の不具廃疾となっているので、それによる(手続的には法四六条三項に基づく)請求については時効の適用は許されない。

(四) 仮に、不具廃疾の程度に該当する毎に請求権が発生するものではなく、程度を問わず不具廃疾に該当した時から七年の時効期間が進行すると解したとしても、控訴人が明確に不具廃疾の状態に該当したのは前記のように昭和四六年二月であるから、本件請求権は時効によって消滅していない。

(五) 本件の控訴人の恩給請求の内容は、恩給請求書(乙二一号証の一)によって明らかなように、公務傷病による恩給を請求するというものであって、法四六条一項による請求と特定したものでなく、一項ないし三項を広く包含し、更に症状の程度によっては法四六条の二第一項ないし三項をも含むものである。従って、本件において原処分の当否を審査するに当たっては法四六条一項のみに限らず、広く四六条ないし四六条の二の全体からその当否が決せられるべきである。

3  証拠《省略》

二  被控訴人

1(一)  控訴人の聴力障害、呼吸機能障害及び平衡機能障害に関する主張事実は、左に述べる外は全て不知。

(二) 控訴人の聴力損失程度は、退職時と恩給請求時とにおいて異なるところがない(甲六号証、七号証、九号証、一〇号証参照)。即ち、退職時に控訴人は法一号表の二第二項症三に規定する不具廃疾の状態に至っていたものである。なお、医学上ストマイによる難聴は、内耳性難聴あるいは神経性難聴と称されるところ、ストマイ使用停止後はストマイの中毒を原因としては増悪しないとされ、またいったん発病した障害の予後は極めて悪く恢復はほとんど困難とされている。次に、呼吸機能障害に関しては、前掲甲六、七号証には何らの記載もされていない。仮に控訴人主張のとおり右障害が法一号表の二第五項症五に増悪していたとしても、控訴人は聴力障害ですでに退職当時法一号表の二第二項症三に達していたから、法四六条の適用に関して呼吸機能障害は何の影響もない。

2(一)  退職当時給与事由の生じたものについては法四六条一項の規定により恩給を給することができるが、退職後新たに給与事由の生じた場合、並びに退職当時給与事由が生じ恩給の裁定を受けていたもので退職後症状が増悪した場合には、法四六条一項の規定のみでは恩給が給与または改定されないことになる。そこで同条に二項、三項の規定が設けられたものである。退職後不具廃疾となった傷病の公務起因性の認定は経時的に困難になるが、二項は退職後五年以内であれば傷病の公務起因性について一応の判断がなし得ることに着目して請求期間を制限するにとどめ、三項は右判断の困難なることより恩給審査会の議決を給与要件として定めたものであって、右三項はそれ以上のものではない。

(二) 従って、右三項が―議決後の時効完成は別として―時効の適用を排除するかの如き控訴人の主張は全く失当であって、退職時(又は五年以内)に不具廃疾であれば、それより七年の経過で時効が完成するのは当然であって、その際の請求が三項に基づくか否かは何らの関わりがない。

(三) 不具廃疾の程度に該当する毎に恩給請求権が生ずるとの控訴人の主張は、法四六条の解釈上失当である。蓋し、同条二、三項にいう「改定ス」とは、すでに確認されている増加恩給受給権を前提にその内容を改めることを定めたもので、新たにその都度恩給請求権が発生することを規定したものではないからである。

(四) 控訴人の場合、退職時に不具廃疾の状態に至っていたことは前述のとおりであるから、控訴人が明確に不具廃疾の程度に該当したのは昭和四六年二月であるとする主張は失当である。

(五) 控訴人の本件恩給請求は、恩給請求書及びその添付書類(乙二一号証の一ないし一五)、とりわけ同号証の八によれば、控訴人が公務に起因する傷病によって不具廃疾となり昭和三〇年三月三一日退職したので恩給を請求するというものであり、右事実は、控訴代理人作成に係る訴状の記載(請求の原因三の2)によっても明らかで、以上によれば本件恩給請求は法四六条一項に基づくものというべきである。

従って、万一、控訴人主張のように控訴人について法四六条三項に基づく恩給請求権が存するとしても、右請求権につき審査請求前置(法一五条の二)の要件を欠き、本訴においてこのような請求を前提とする主張をなすことは許されない。

3  証拠《省略》

理由

一  当裁判所もまた、当審において取調べた各証拠を考慮に入れても、控訴人の請求は失当(被控訴人の時効の抗弁は正当)と判断するものであって、その理由は、左に附加するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

二  控訴人は、当審において、時効未完成の理由の追加として、控訴人が不具廃疾となった時期の主張を昭和四六年二月と改め、これを前提として昭和四七年一二月一日の本件処分時には時効は未完成であると主張する。

そこで、まず右時期の点を検討するに、《証拠省略》を総合すると、控訴人は昭和二九年七月一七日三重県立大学附属病院において耳鼻科の医師である横山恒夫の診断を受けたところ、両耳とも聴力損失が八五デシベルで、「補聴器の効果は余り得られないと考える。」と診断され(甲一八号証)、更に昭和三〇年一月四日(即ち退職の三か月程前)に身体障害者認定のため再び同病院において同医師の診断を受けたところ、両耳とも九〇デシベル以上で、「級別二級」と診断され(甲九号証)、これに基づき同年二月一日三重県は控訴人に対し、「神経炎による全ろう」で「等級一種二級」とする身障者手帳を交付したことが認められる(甲一〇号証)。

ところで、法(恩給法)四九条の二及び法第一号表の二によれば、聴力の損失については、「両耳全ク聾シタルモノ」(同表第二項症三号)及び「両耳ノ聴力カ〇・〇五メートル以上ニテハ大聲ヲ解シ得サルモノ」(同表第四項症三号)とその程度こそ異なれ、右はいずれも同法にいう「不具廃疾」に該当するものと定めているところ、前認定のとおり、控訴人は、すでに昭和二九年七月時点で聴力を相当損失しており、更に退職の二、三か月前には聴力を高度に損失し、身体障害者福祉法施行規則の別表第五号の等級表に照らすも、両耳の聴力損失が九〇デシベル以上で全ろうを示す一種二級の認定を受けているのである。

従って、右の事実関係よりみて、控訴人については、その呼吸機能障害に関する判断に入るまでもなく、その聴力障害の点において、既に退職時たる昭和三〇年三月三一日現在、前記法第一号表の二の重度(第二項症三号)、少くとも軽度(第四項症三号)の不具廃疾の状態にあったと認定するのが相当である。

三  これに対し控訴人は、まず右甲九号証及び一〇号証自体の信ぴょう性を争うけれども、右甲九号証は前記のとおり県立大学の医師が作成した公用の診断書であって、その形式・内容を検討しても特に疑義をさしはさむ余地はなく、又甲一〇号証も、右甲九号証に基づくものとはいえ、県の立場、見解を示す身障者手帳に関する証明書として、これ亦その信ぴょう性を否定する事情は見当らない。

控訴人は更に、控訴人がその後補聴器を使用して聴取可能であった事実、及び昭和三六年七月に「右耳九〇デシベル、左耳八五デシベル」とする等級二種三級の身障者手帳を受けており、両耳とも九〇デシベル(等級一種二級)とする身障者手帳を受けたのは昭和四六年二月に至ってからである事実を挙げて右甲九、一〇号証を批判するが、補聴器使用の点については、控訴人の退職時の不具廃疾の程度が前記軽度の場合には、その後症状増進までの間は補聴器の使用も可能であるのみならず、凡そ病状というものは概ね一進一退し、その間に多少の巾のあるのが通常である(控訴人はこの点につきストレプトマイシンによる難聴の場合には症状増悪するのみであるというが、《証拠省略》に照らし、右は医学界の定説とは到底認め難いから採用しえない。)から、退職後補聴器使用の事実があったとしてもそれのみで前記退職時点の症状認定をくつがえすには至らず、又退職時より六年余経過後の症状をもって右認定を左右することもできない。

更に控訴人は、仮に退職時の症状が甲九、一〇号証の症状と同一だとすれば、それは心因性の一過的なものである旨主張する。確かに控訴人がその頃不安定な精神状態にあったことは容易に推察しうるが、しかし、右不安定状態が聴力損失の程度を一時的に増巾せしめたとの点については、本件全立証によるも、これを的確に認定しうる証拠はないから、結局右主張も採用することができない。

以上のとおりであるから、控訴人は、その退職時において、重度、少くとも軽度の不具廃疾の状態にあったといわざるをえないのである(ちなみに、《証拠省略》及び本件訴状等弁論の経過によれば、控訴人も、当審において主張を変更するまでは、退職時に不具廃疾の状態にあったことを自認していたものである。)。

四  右の次第であるから、控訴人の主張のうち不具廃疾の時期が昭和四六年二月であることを前提とするものは、その余の争点に立入るまでもなく、失当として排斥を免れないところ、控訴人は、仮に退職時に不具廃疾であっても、なお時効は完成しない趣旨の主張をなすので、以下順次判断する。

まず控訴人は、退職時不具廃疾でありその七年経過後に恩給請求をしても、それが法四六条三項に基づく場合には、恩給審査会の議決があるまで時効は適用されないと主張する。しかし、法四六条(増加恩給の支給規定)と五条(恩給権の消滅時効規定)とを対比しつつ、右各条の規定の仕方及び法解釈の一般原則からこれをみると、控訴人の主張は独自の見解というの外なく、即ち、四六条三項は、一項の退職時、二項の退職後五年内の各請求の外、五年後も恩給請求をなしうることを認めた(その代り手続及び要件を厳格にした)規定には相違ないが、それ以上のものではなく、退職時に不具廃疾の場合、それより七年内に請求ができたにもかかわらず、これをなさずして時効消滅した恩給請求権までを、三項による請求があればこれを復活させるといった趣旨などを含むものでないことは、多言を要せずして明らかである(控訴人引用の三四五号通知も到底右見解を左右するものではない。)。

次に控訴人は、仮に退職時に不具廃疾であってもそれは軽度のものとみるべきところ、増加恩給請求権は廃疾の程度毎に発生するものであるから、たとえ右退職時の廃疾による請求権が時効消滅しても、本件の場合昭和四六年二月の重度廃疾に基づき(法四六条三項により)請求をなしうると主張する。しかし、退職時の廃疾の程度が必ずしも軽度のみであると即断できないこと叙上のとおりであるのみならず、そもそも廃疾の程度ごとに請求権が生ずるとの見解は、前同様不具廃疾者の保護に傾き過ぎたものであって、法四六条の解釈上到底採用の困難な見解であるから、本主張も失当である。

(ちなみに、控訴人の右各主張は、いずれもその恩給請求が法四六条三項によることを前提とするものであるが、さきに触れたところからも明らかなように、控訴人の被控訴人に対する本件恩給請求は、退職時に不具廃疾であったことのみを理由とするもので、即ち法四六条三項による請求ではなかったから、右各主張はその前提においても失当である。)。

五  以上の次第であるから、控訴人の当審における時効未完成の主張もまた理由がないといわざるをえないので、控訴人の本訴請求は失当として棄却さるべく、これと同旨の原判決は相当である。よって、本件控訴を棄却することとし、行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷卓男 裁判官 寺本栄一 三関幸男)

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